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目まぐるしく移り変わってゆく、様々な日常の色を綴る。
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2008/05/13 (Tue)
「いかがですかな? 王」
「…ダメだな。これも後に淘汰されるだろう」
「手厳しいご判断で。今居る者の中では次で最後となります」
「通してくれ」
家来に「入れ」と促され、一人の人物が連れて来られる。
ダークブラウンの長い髪をした…、少女?


「っ…痛いです! 何なんですかいったい…」
「黙れ!! 王の許可もない言動は慎め!!」
腕を掴まれていた少女はいきなり怒鳴られたことにびくっと肩を震わせた。
俯いて小さく震える姿は、とても弱々しく、儚げで……
「…もういい。君たちは下がってくれ。後は僕が話す」
「「はっ!」」



「……」

「……」


家来たちを下がらせ人払いをさせた後、王室の間には二つの影があるだけだった。
王である少年・蒼星石と、連れて来られた一人の少女の二人だけ。
少女は言葉を発することもなく、ただただ俯いたまま震えていた。

「怖かったね」
「……」
「腕、痛かっただろう?」
「……」
「もう君を怒鳴る者は居ない。喋っていいんだよ?」
「……」

促しても、少女は何も言わない。肯定も否定もせずにただ俯くだけ。
数分の沈黙を要し、少年は少女へと歩み寄る。スッ…と跪くようにしゃがみ込んで、少女の顔を覗き込む。
頬に掌を添え、そっと、俯いている顔を上げる。戸惑うようにゆっくりと上がった瞳が、絡んだ。
微かな怯えが、その瞳には宿っている。これから自分がどうなるのか、理解は及んでいるようで。
だけど。
「僕が怖いかい?」
「…っ…だって貴方は…貴方の噂は…」
「そう。"それ"は真実(ほんとう)だ。でも君に危害を加える気はないよ」
「えっ?」
少女は心底驚いたような顔をして少年を見つめた。少年はわかっていたように微笑み返す。
ゆっくりと少女を立たせ、両手首の戒めを解く。手首にくっきりと残る痕から、うっすらと血が滲み出していた。
「この傷はひどいな…。すまない。家来には後で僕が言っておく」
「…ぁ…、…」
「こっちにおいで。すぐに手当てするから」
手を引いて、ゆっくりとすぐそばのソファーに座らせる。
戸惑う少女もそのまま、素早く消毒を済ませ、包帯を巻き終え治療を施す。
少女はただそんな様子を眺めているだけ。
「染みるかい?」
「…え? あ、いえ……」
戸惑いを見せる小さな返事。だが蒼星石には聞こえていた。
うん、と頷き返しながらも治療を終え、少女を解放する。
「…よし。これで大丈夫」
「…あ、あの…」
「うん?」
「……ありがとう…です…」
「……、どういたしまして」
少女がやっと言葉を交わしてくれたことが嬉しく思えて、自然と表情が綻んだ。
恥ずかしそうに顔を伏せる仕種が可愛くて、もう一度ゆっくりと手を取った
少女が少し驚いていたが気にも留めず、視線を絡める。ぎゅっと握った掌は、心なしか冷たかった。
怪我に障らないようにゆっくりと自分の両の掌に収め、包み込んだ。
「ごめんね。もう大丈夫だから」
「……はい」
少女は小さく頷く。その瞳には、もう先程のような怯えはなくなっていた。
安心したように肩の力を抜いて、ゆっくりと息を吐く。
この王は、もしかしたら噂のような性格ではないのかもしれない。
いや、あんな噂など嘘だと思えるほど優しい人柄だと感じられる。
「君の名前…訊いてもいいかい?」
「……翠星石…です」
「翠星石…いい名だ。僕は蒼星石。好きに呼んでくれていい」
「…はい…、…国王様…」
「堅苦しいな…もっと砕けて呼べないかい?」
「…主様…ですか…?」
「まだ堅いな」
「…蒼星石様…?」
「もう少し砕いて」
「…え、…と…」
もう呼べる名がない。
王でも様でもだめならば、あとは呼び捨てしか残されていないではないか。
しかしそんなことは許されるものではない。ましてや自分はこの王に仕える奴隷の一人なのだ。呼び捨てなどなれなれしいにも程がある。
しかし目の前の王──蒼星石は、真剣な顔でこちらを見つめるだけ。
呼び方を迷う少女を眺めたまま、蒼星石は小さく微笑みを零す。少女の片掌を包み込んだまま、顔を覗き込む。
「蒼星石でいい」
「えっ!? あ、でもそんな…っ」
「いいから。言ってみてよ。僕の名前を呼んで」
やわらかく微笑う。あまり笑わない自分にしては珍しい、何の飾り気もない自然な笑顔。
この少女と会うのは初めてだというのに、何か心の底から湧き上がってくるものがある。
馴れ合うことも好まない自分が、笑うことも得意としない自分が、今この少女に対して素直に接している。
何故かはわからなかった。だけど嫌だとは思わなかった。
ただ、今目の前に居る少女に、自分の名を呼んでほしかった。
「……蒼星石……」
翠星石は小さく名を呼ぶ。その頬は、うっすらと紅く染まって。
男性を呼び捨てにしたことがないのか、はたまた恥ずかしいのか、呼んですぐにまた顔を伏せた。
「…うん。そう呼んでくれればいい」
「…で、でも…なれなれしいですよ…。立場もわきまえないで…」
「構わない。君とは対等で話がしたいから」
「…貴方は王で私は奴隷です。対等なんて言葉はないです…」
そう。それが、この国の掟。定められた法律。
平民の者、それも女に限り、王家の生まれの者たちに対し生涯尽くさなければならない掟がある。
この国で王は神にも値する存在であり、ただの平民である自分たちはその奴隷として一生を終える。
拒否権など一切与えられない。自身の意思など関係なく王宮へと連行され、奴隷を命じられ仕える日々。
翠星石も齢14歳になった今、奴隷としての道を余儀なくされた。
「王族の貴方たちにとって私たちはただ付き従うだけの存在です。だから…」
「対等なんかじゃない。そんな言葉は気休めだ…。そういうことかい?」
「……」
そう教えられて今までずっと育てられてきたのだ。
『王』と『民』とでは天と地との差がある。『対等』などという言葉は存在しない。
己の全てを王に捧げ生涯を遂げる運命。道具として、時には駒として、使われるだけだというのに。

それを、"対等"に?

(何を言ってるんですか。この少年(ひと)は…)

未だ掌を握られたまま、思う。今までの王とは違うであろう感じはするが、やはり何か釈然としない。
名前で呼んでいいとか対等に話がしたいとか…王家の人間らしからぬ発言が多い気がする。
…いや、優しい人柄だとは見受けられる。でもそれだけでは本心などわからない。
あまり迂闊に心を許したりしないほうが賢明だろうか。

知らず、少年の顔を睨んでいたのだろう。蒼星石が呆れたように肩をすくめた。
訝しむような視線を向ければ、少年はその意図をわかっているかのように小さく笑みを漏らした。
その、見透かされたような笑顔と態度が、余計に疑惑へと導いてゆく。
この少年は…何?

「そんな顔しなくていい。危害を加える気はないと言ったろう?」
そんなにきつくもないが睨んでくる少女を眺め、苦笑する。
先代の王の噂もあってか、やはり王族はみな"そう"だと印象付けられているようだ。
先代からの"伝承"。受け継がれてきた"掟"。
付き人や臣下などと偽り、実際は奴隷としてその者の一生を剥奪する。
表向きは礼儀正しそうな振りをしていても裏では違うのだと。民を騙しその利益を我が物とする人間も少なくない。
当然王族の生まれとして育った自分自身もその掟を守ってきた。何の疑問も抱かぬまま。
平民の、それも女性を従え、仕えさせる。それが当たり前なのだ。それが昔から伝えられる掟。
今回もその"奴隷"となる器の少女を見定めていただけ。自分にとって相応しい"奴隷"を決めるために、この少女を呼んだだけだった。
そのはず、なんだ。
「君を酷い目に遭わせたりはしないよ」
「……変な王ですね。自らそんなこと言うなんて…」
どうにも可笑しな少年だ。
何故"王自身"がそんなことを言う? 奴隷として使うために呼び寄せたのではないのか。

何故そうも断言できる?
 
───まさか。

「……! 安心させておいて後から裏切る魂胆ですか! そんな手には乗らないですよ!!」

掴まれていた手を勢いよく解く。慌てて立ち上がり、警戒するように後退する。
蒼星石は一瞬目を剥いたがすぐに肩をすくめた。同じように立ち上がり、少女に視線を向ける。
翠星石の瞳には今は怯えではなく怒りの色が宿っていた。濃い色と強い光が込められた、鋭く、睨みの利いた視線。
「…へぇ。いい眼だ。澄んだ…強い瞳をしてるね」
「……」
見透かしたような物言い。一見すれば嘲笑うかのような言い方。やはり騙そうと企んでいたのか…
睨みの視線を強くした矢先、少年が近付いてきた。
咄嗟に身構えるも少年は余裕のある笑みを見せるだけ。
「君のその強い心…気に入ったよ。僕の奴隷は君にする」
「…!?」
「君の生涯は今この時をもって全て僕が奪う」
愕然とする少女に笑ってみせる。一瞬ひるんだその隙を狙い腕を掴み、引き寄せた。
逃がさないように強く腕に抱きすくめて、もう一度囁いてやる。よりはっきりと聞こえるように、耳元で。

「今日から君は僕のものだ」

王となってから生まれてはじめて手に入れた、一人の少女。自分だけの"奴隷"。

"翠星石"

手に入れた少女の名を呟きながら、ただ笑う。

さぁ、これからどう使ってあげようか。



王である少年と奴隷である少女の生活が、幕を開けた。


++++++++++


長いですね(爆)。またしてもどこぞから発掘したものですので…。
このSSでは蒼は少年設定です。しかしまぁ何とも違和感のない…(笑)

思いつきをてきとーに立派そーに書いただけなので特に続く予定はありません。
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2008/03/03 (Mon)
金色の満月の下。夜が降りる。
閉ざされた空間の中に居る、二つの影。
「こんばんは」
静かな声。凛と透き通るような心地よい声。
ゆっくりと視線を向ければ、同じように向けられた瞳と目が合った。
薄暗い部屋、静かな空間、二人だけの世界。
ただ、見つめ合った。
「来てくれたんだね。嬉しいよ」
彼女にしか見せないやわらかな笑顔を向けて、微笑んで。
ゆっくりと、片掌を差し伸べた。
彼女が掌に自分の掌を重ねてくる。遠慮がちに触れた指先(て)を迷うことなく握って、引き寄せた。
ふわりとした香りが鼻をくすぐる。それは、彼女だけが持っている、彼女だけの匂い。
「やっぱりいい匂いだね、君は」
「…口説いても何も出ないですよ」
くすりと微笑う君が愛しくて。指を髪に絡めて、梳いていく。
このまま抱き締めれば、きっとこの腕いっぱいに、この胸いっぱいに、彼女への想いが溢れてくるだろう。
「今日は満月だから」
耳元でそっと囁けば、彼女はそれを肯定する。
彼女の片掌を取ったまま、ゆっくりと軽く体を離した。
再び互いの瞳が出会う。その度に紡がれる名がある。
「今夜も、君だけのために───」
取った手の甲にそっと口付ける。それは今宵の始まりを告げる合図。
君が微笑う。僕も微笑う。
二人だけの世界で、今宵も二人だけの時を。


さぁ、踊ろう?


++++++++++++++++++++

月明かりの下で踊る。二人だけの、ワルツを。
……みたいな感じですか(笑)。バリバリ蒼翠ですね! よっし!
双子でワルツとか。いいね! 「Shall We Dance?」とかのセリフが蒼がもっすごい似合いそう(笑)。
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* ILLUSTRATION BY nyao *